クリーンプラネットCIO(チーフ・イノベーション・オフィサー)の遠藤美登氏は、「現時点では、発熱量の実測値が想定値より2~3倍も大きくなるケースもあり、やはり定量的な再現性が課題になっている。あと2年ほどかけて改良を重ね、温度制御の精度を十分に高めたうえで製品化したい」と言う。
さらにその先には、産業向け用途の拡大と民生用、そして発電システムへの応用をイメージしている。
発熱素子は複数枚、重ねることで1000度近い高温を生み出すことも可能という。「将来的には、製造工程で電化の難しい様々な高温プロセスへの適用も期待できる」(遠藤氏)と見ている。ただ、1200度を超えるとニッケルが融け、素子の層構造が崩れるため、そこで反応は止まるという。見方を変えると、かりに熱交換の不具合などで素子の温度が急上昇しても1200度に達した時点で停止するため熱暴走は起きないという。
また、民生用の暖房用途などには、断熱構造の工夫で、追加的に熱を加えずに熱自立できるタイプが向いている。「例えば、チップをシート状にし、コンデンサのように巻き紙構造にすることで発熱温度が容易に上がり、熱自立させて長期間、一定の発熱を維持できる可能性がある」と、遠藤氏は言う。
「発熱素子のナノレベルの積層構造は、日本の製造業が強みとする薄膜技術が生かせる。こうしたノウハウのある企業と組むことでチップの大面積化、シート化も容易とみており、そうなれば応用範囲も広がる」(遠藤氏)と見ている。
発電システムへの展開では、蒸気タービン発電機との組み合わせをイメージしているという。熱電素子によるコンパクトな構造も可能だが、発電効率を重視すれば、熱を蒸気に転換して発電機を回すランキンサイクルが有利とみている
これ大規模実用化できたら核分裂炉から卒業できるかもしれんな